海外広告で失敗しないための事前リサーチ完全ガイド

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海外に向けてネット広告を配信する際、日本と同じ感覚で進めると成果が出ないことがよくあります。文化の違い、使われている媒体の違い、広告効果の出やすいタイプの違い、これらを事前に把握し、広告戦略とKPIを設計することで、費用対効果を最大化できます。本記事では、その手順と考え方を解説します。

目次

なぜ海外広告には「事前調査」が不可欠なのか

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海外向けに広告を配信する際、国内と同じ感覚で進めてしまうと、高い費用をかけても成果につながらないリスクがあります。その最大の理由は、「広告環境」「文化的背景」「消費者の価値観」が国によって大きく異なるためです。広告を成功させるためには、まず現地市場の前提条件を理解することが重要です。

日本と海外で異なる広告環境

広告を配信するプラットフォームやユーザーが使っている検索エンジン、SNSのシェアは、国ごとに大きく異なります。たとえば、日本ではGoogleとYahoo!が主要な検索エンジンですが、韓国では「NAVER」、中国では「Baidu」が圧倒的に利用されています。

SNSも同様で、FacebookやInstagramが強い国もあれば、WhatsAppやTikTokがメインの国、あるいはローカルアプリが主流な地域もあります。そのため、出稿先の国ではどの媒体がユーザーの行動導線上にあるのかを把握することが不可欠です。

「とりあえずGoogle広告で出せばいい」という感覚で配信すると、実はターゲットユーザーに全く届いていなかった、というケースも珍しくありません。

文化・競合・価格感の違いが大きい

もう一つ見逃せないのが、文化的な価値観や競合環境の違いです。たとえば同じ商品の広告でも、アメリカでは「機能性」や「価格の安さ」が重視される一方、フランスでは「デザイン性」や「伝統」が重視されることもあります。

また、競合企業の広告の打ち出し方も異なり、訴求軸や価格帯、プロモーションの見せ方にその国独自の傾向があります。こうした現地プレイヤーのアプローチを無視して広告を出しても、ユーザーに響かないばかりか、むしろ違和感を持たれてしまうことすらあります。

消費者が「価値を感じるポイント」は、国や地域によって驚くほど異なるものです。だからこそ、事前に文化や競合を調査し、「その国ならではのニーズに合った訴求」を設計する必要があるのです。

広告ポートフォリオを構築するステップ

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海外広告を成功させるためには、「どの国で、どの媒体に、どのタイプの広告を出すか」という全体設計=広告ポートフォリオの構築が不可欠です。ここでは、そのための基本ステップを2段階に分けて解説します。

ステップ1|マーケティングファネルで広告タイプを選ぶ

まずは「ターゲットがどの購買段階にいるか」を把握し、それに応じた広告タイプを選定します。これはマーケティングファネル(認知→興味→比較→購入)に基づいた発想です。

たとえばまだ商品やサービスを知らない「非認知層」には、広く視覚に訴えるディスプレイ広告やSNS広告(Meta広告など)が効果的です。一方で、すでに課題を認識していて解決策を探している「潜在層」や「準顕在層」には、検索連動型広告(リスティング広告)が有効です。

そして、商品名やブランド名で検索するような「顕在層」には、ショッピング広告ブランドキーワード広告など、購入直前の行動を後押しする広告が効果を発揮します。

このように、「誰に届けたいのか」によって最適な広告タイプはまったく異なります。無差別に出稿するのではなく、ファネルに応じて広告手法を選びましょう。

ステップ2|各国の媒体を把握する(StatCounter等を活用)

広告タイプを決めたら、次はどの媒体で配信するかを決めるステップです。国によって使われている検索エンジンやSNSのシェアが異なるため、媒体選定を誤ると広告がそもそも「届かない」リスクがあります。

このとき役立つのが、StatCounterのようなWeb分析ツールです。国別に検索エンジン(Google、Bing、Yahoo!など)やSNS(Facebook、Instagram、TikTokなど)の使用シェアを確認することができます。

たとえば、ヨーロッパではGoogle広告の効果が高い国が多い一方で、アジアの一部ではMeta広告(Facebook/Instagram)のシェアが高く、購買導線上に組み込みやすいという特徴があります。逆に、中国やロシアのようにGoogleやMetaが使えない・弱い地域では、現地特有の媒体(例:Baidu、VKなど)を検討する必要があります。

つまり、広告タイプ × 国別の媒体シェアというマトリクスを組んで、それぞれの市場に最適な広告ポートフォリオを設計していくことが、無駄のない海外広告運用の基本なのです。

StatCounter等を活用に関する国別データ

競合調査とニーズ調査のすすめ方

広告の成果を最大化するには、「現地ではどんな広告が出ているか」「その市場にどれだけニーズがあるか」を事前に把握しておくことが不可欠です。ここでは、現地視点での競合分析と、検索ボリュームを用いたニーズ推定の方法を紹介します。

VPNを使って現地環境で検索する

まず取り組むべきは、競合他社が現地でどのように広告を出しているかを調査することです。これには、VPN(Virtual Private Network)を活用して、ターゲット国のIPアドレスに切り替えた状態で検索を行うのが効果的です。

現地のIPアドレスに切り替えることで、その国のGoogleやYahoo!などの検索結果や広告表示がローカライズされて表示されます。たとえば以下のような情報が得られます:

  • どの企業が広告を出しているか(競合リストの把握)
  • 使用されているキーワード(検索トレンド)
  • 表示される広告の種類(ディスプレイ/リスティング/ショッピングなど)
  • 訴求軸やコピーの特徴(例:「安さ」「品質」「限定」など)

これらをチェックすることで、現地ではどんな価値が重視され、どんな戦略が採られているのかが見えてきます。自社の商品が競合と差別化できるポイントや、逆に不利になりそうな要素もここで整理しておきましょう。

検索ボリュームで市場ニーズを推定

もうひとつの重要な指標が、キーワードの検索ボリュームです。Google広告のキーワードプランナーなどを使えば、ターゲット国でどれだけの人が特定ワードを検索しているかを調べることができます。

検索ボリュームが多い=関心が高い=購買意欲がある可能性が高い、という前提で考えると、検索数が多いキーワードを中心に広告を設計するのがセオリーになります。

たとえば、ある商品に関連するキーワードが頻繁に検索されているなら、検索連動型広告(リスティング)が有効です。一方で、認知度の低い商品や新カテゴリで検索数が少ない場合は、まずはディスプレイ広告やSNS広告などで「認知をつくる」施策が必要です。

検索数が多く、かつ商材と親和性が高いキーワードを見つけることで、「誰に・何を・どう伝えるべきか」が明確になります。検索ボリュームは、広告施策の設計図となるマーケティングファネルを描く上でも、非常に有用な材料です。

KPIとシミュレーションでリスクを減らす

海外広告において、成果を最大化するためには「感覚」ではなく「数値」に基づいた設計が必要です。どれだけの費用をかけ、どれだけの成果を得られそうか。その見通しを立てるためには、KPI(重要業績評価指標)の設計と、事前のシミュレーションが欠かせません。

KPIの設計はROASとCPOが基本

KPI設計でまず押さえておきたいのが、ROAS(広告費用対効果)とCPO(顧客獲得単価)という2つの指標です。

  • ROAS(Return On Ad Spend):売上 ÷ 広告費
  • CPO(Cost Per Order):広告費 ÷ 購入数

たとえば、1件の購入にかけられるコストが$30で、広告1クリックあたり$1、CVR(購入率)が2%であれば、必要なクリック数は50回、つまりCPOは$50となり、目標を上回ってしまいます。こうした逆算により、「どの媒体で・どんなKPIを置くべきか」を具体的に設計することができます。

広告タイプ別の参考単価・成果例(イメージ)

広告タイプ平均CPC平均CVR想定CPO主な活用媒体
Google検索広告$0.83.5%約$23顕在層向け
Meta広告(Facebook)$0.51.0%約$50潜在層・認知拡大向け
TikTok広告$0.30.8%約$37Z世代中心の新規認知

※上記はあくまで一例です。商材やターゲットによって大きく異なります。

事前にシミュレーションして予算設計を

KPIを設計したら、次に行うべきは予算シミュレーションです。CPC(クリック単価)やCVR(コンバージョン率)を仮に置き、成果がどの程度出そうかを机上で試算しておくことで、広告投資のリスクを大きく下げられます。

たとえば、月間予算$1,000でMeta広告を回す場合、CPCが$0.5なら2,000クリックが見込まれます。CVRが1%なら20件の注文が期待され、CPOは$50。これが許容範囲かどうかを、事前に確認しておくことで、「広告を出したはいいが赤字になった」という事態を未然に防げます

また、複数パターンを試算しておくことで、成果が出やすいシナリオに絞った配信設計が可能になります。特に海外市場では、言語や文化の違いからCVRが読みにくいため、こうした予測的な視点は極めて重要です。

まとめ|海外広告は「戦略×設計」で成果が変わる

海外市場に広告を出す際、成果を出すための鍵は「センス」や「感覚」ではなく、戦略と設計の積み上げにあります。

どの国に、どんな広告を、どの媒体で出すのか。
どの段階のユーザーを狙うのか。
どの指標で評価し、どこまでの成果を見込めるのか。

これらを明確にしたうえで、KPIとシミュレーションまで組み込んだ広告設計を行うことが、無駄のない広告投資につながります。

一方で、「とりあえず出してみる」「国内と同じ感覚で運用する」といった出稿は、的外れなターゲティングや非効率な訴求につながり、“打ったのに成果が出ない”という無駄打ちのリスクを高めます。

だからこそ重要なのが、事前の現地調査と戦略設計です。競合の動きや現地ユーザーのニーズを把握し、媒体や広告タイプ、指標を最適化した設計こそが、費用対効果の高い海外広告運用を実現する最短ルートなのです。

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