「どの国に売るべきか?」を検索キーワードから逆算する方法|越境ECのターゲット国選定ガイド

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なぜ「国選び」に検索キーワードが重要なのか

越境ECを始めるとき、多くの人がまず「どの国に向けて展開するか?」という問いに直面します。
しかし、ここで直感的に「アジアは伸びていそう」「英語圏なら売れるかも」と感覚で国を選んでしまうと、後の施策が空回りするリスクがあります。

その判断をより確実にする材料が、検索キーワードのボリュームデータです。
Google広告やSEOの検索数は、「その国の人が、どれだけその商品に関心を持って調べているか」を示す客観的な指標です。
つまり、検索ボリュームは“関心の温度”を数値化したシグナルとして活用できます。

たとえば、自社の商品名やカテゴリで調べたときに、フィリピンやタイで検索数が多く、欧州ではほとんど検索されていなければ、その商品を優先すべき国はアジア圏である可能性が高いと言えます。

一方で、配送設定や翻訳対応などの施策は**国を選定した後に行うべき“後工程”**です。
国ごとの需要を見極めずにいきなり展開してしまうと、せっかくのリソースが無駄になる恐れがあります。

だからこそ、「どの国に売るべきか?」を考える際には、まずキーワードベースでニーズを可視化し、国選びをデータで裏づけることが、戦略的なスタートラインとなります。

ターゲット国の仮説はキーワードから立てる

越境ECで失敗を避ける第一歩は、「売れそうな国に商品を出す」ことではなく、「すでに関心がある国を見つける」ことです。
そしてその判断材料としてもっとも信頼できるのが、検索キーワードのデータです。

ここでは、Google広告やSEOの視点から使える調査ツールを紹介します。

まずはGoogle広告のキーワードプランナーで確認

もっとも手軽に始められるのが、Google広告アカウントで利用できるキーワードプランナーです。
自社商品のカテゴリ名や具体的な商品名を入力し、どの国でどの程度検索されているかを確認します。

調査時のポイントは以下の通り:

  • 「日本」を除外し、全世界または特定エリアで検索ボリュームを確認
  • 「Breakdown by location(地域別内訳)」を使って、国ごとの検索傾向を一覧で取得
  • 表示される月間検索数から、関心度の高い国を可視化できる
  • 複数の商品カテゴリや関連ワードで横断的にチェックすると、より確度が上がる

たとえば「折りたたみ傘(folding umbrella)」と検索した場合、日本以外でアメリカ・インド・タイなどの検索ボリュームが高ければ、まずはこれらの国でテスト展開する仮説を立てられます。

有料ツールでさらに深掘り(例:Ahrefsなど)

より高度な分析を行いたい場合は、AhrefsやSEMrushといった有料ツールの活用が有効です。
これらのツールでは、次のような情報が得られます:

  • キーワードの検索ボリューム・難易度(Keyword Difficulty)
  • CPC(クリック単価)=広告配信のコスト感
  • 競合サイトの数や強さ
  • 実際の検索結果画面(SERP)の構成

たとえば、「yuzu」というワードをAhrefsで調べれば、世界各国の検索トレンドに加えて、上位表示されている競合サイトの傾向まで把握できます。
この情報により、「SEOで狙うか」「広告で攻めるか」の判断もしやすくなります。

キーワードは単なる数値ではなく、実際の関心と競合状況を可視化する“市場のレンズ”です。
仮説を立てるには十分な根拠になるため、国選びに迷ったときこそ活用すべき手段と言えるでしょう。

検索ニーズに応じた4つの打ち手

ターゲット国を選定する上で、検索ボリュームやCPC(クリック単価)、SEO難易度、想定される売上貢献度などの指標は非常に重要です。

これらを総合的に見ていくと、以下のような4つの施策パターンに整理できます:

① SEOで中長期的に流入を狙う場合

  • 検索ボリューム:多い
  • CPC(広告コスト):高い
  • SEO難易度:中〜高
  • 売上貢献性:高め

このパターンでは、広告を出しても費用対効果が合わない可能性があるため、中長期でSEOを強化して自然流入を狙うのが有効です。
たとえば「high-quality Japanese kitchen knife」のようなニッチだが検索意図が強いキーワードが該当します。

② 広告で短期的に流入を獲得する場合

  • 検索ボリューム:中〜多い
  • CPC:中〜低い
  • SEO難易度:高め(短期での上位表示が困難)
  • 売上貢献性:即時性あり

広告のクリック単価が安く、SEOで勝つには時間がかかる場合は、Google広告やSNS広告でスピーディに流入を得るのが最適です。
季節商品やプロモーション用キーワードに向いています。

③ SEO+広告 両方で狙うハイブリッド戦略

  • 検索ボリューム:多い
  • CPC:中程度
  • SEO難易度:中程度
  • 売上貢献性:高い

このゾーンはもっとも理想的です。SEOと広告の両面から攻めることで、短期と中長期の両方の流入を確保できます。
広告で回しつつ、SEOで資産を育てていくイメージです。

④ 検索ニーズが薄い場合は優先度を下げる

  • 検索ボリューム:少ない
  • CPC:高い or そもそもデータが出ない
  • SEO難易度:不明 or 高い
  • 売上貢献性:不明確

このパターンは、今の段階で積極的にリソースを投下するべきではないゾーンです。
ただし、検索ボリュームがなくても別チャネル(SNS・インフルエンサー経由)でニーズがある場合は例外となります。

国を絞る?絞らない?戦略の考え方

越境ECを始める際に多くの企業が悩むのが、「特定の国に絞って展開すべきか、それともグローバルに広げるべきか?」という問いです。
どちらにもメリットとリスクがあり、自社の商品特性やリソース状況によって最適解は異なります。

ここでは、2つの代表的なアプローチを紹介しながら、判断軸を整理していきます。

ターゲット国を限定するパターン

まず1つ目の戦略は、「最初からターゲット国を絞り込む」という方法です。
たとえば、検索データからニーズが明確な国(例:アメリカや台湾)に集中してプロモーション・翻訳・物流を最適化する形です。

この戦略のメリット:

  • 翻訳・広告・CS対応の負担を最小限に抑えられる
  • 限られたリソースを集中的に投下できる
  • 国ごとの文化や購買傾向に合わせた深いマーケティングが可能

向いている商品:

  • 現地の法律や輸入制限に影響を受けやすいカテゴリ(例:食品・化粧品)
  • 特定地域に強いファン層やトレンドがある商品(例:アニメグッズ・和雑貨)

世界展開しながら有望国に集約するパターン

2つ目は、広く販売チャネルを開きながら、後から成果が出ている国に絞っていく戦略です。
Shopify+WSBのような仕組みを活用すれば、最初から50カ国以上に対応可能な導線も設計できます。

この戦略のメリット:

  • 初期段階から「どこで売れるか?」のテストが並行して進む
  • 意外な国(例:南米や中東)で反応が取れるケースもある
  • 絞り込む際の判断材料がデータベースで手に入る

向いているケース:

  • 商品が法律や物流に左右されにくい(例:ファッション雑貨、デジタル製品)
  • すでにSNSで多国籍なフォロワーを持っているブランド

判断の軸になる3つの視点

  1. 物流面:冷蔵・保冷が必要か?関税は?送料は高騰しないか?
  2. 商品の性質:宗教・文化による需要の差異はあるか?
  3. リソースの現実性:翻訳・サポート・配送業務をどこまで捌けるか?

まずはデータをもとに「仮説 → テスト →集約」の流れを設計することが、無理なくスケーラブルに展開していくための鍵となります。

まとめ|「どこに売るか」はキーワードで見えてくる

越境ECの第一歩は、「どの国で売るか?」という選択から始まります。
しかし、それを感覚や経験だけで決めてしまうと、後の翻訳・広告・物流対応でムダが生まれるリスクもあります。

だからこそ、検索キーワードのデータを使って仮説を立てることが重要です。
国ごとの検索ボリュームや広告コスト、SEOの難易度を見れば、市場の“温度感”と競争環境が数字で可視化できます。

データをもとに戦略を組み立てれば、

  • リソース配分が的確になり
  • 優先順位がクリアになり
  • 施策の効果も最大化しやすくなります。

「どこで売れるか」は、自社で決めるものではなく、“検索されている場所”が教えてくれる
越境ECの成功は、その声に耳を傾けることから始まります。

*記事内の図や戦略マトリクスを含む資料は、下記の資料ダウンロードから無料でダウンロードできます。

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