EMS・PCCC・VAT完全解説|韓国越境ECの物流・関税対応

韓国は日本から距離が近く、物流面での優位性があるため、日本企業にとって最も取り組みやすい越境EC市場のひとつです。実際にコスメ・健康食品・生活雑貨といった日本製品は、短期間で韓国ユーザーの手元に届くことが大きな強みとなっています。
しかし、韓国向け越境ECでは単に商品を発送するだけでは不十分です。
配送スピード・通関手続き・関税/VAT対応 といった要素を適切に整備しなければ、配送遅延や返送トラブルが発生し、売上や顧客満足度に直結するリスクとなります。
本記事では、韓国向け越境ECにおける 物流と通関の実務ポイント(EMS・PCCC・VAT対応) を徹底解説し、これから参入を目指す日本企業が押さえるべき具体的な対応策を紹介します。
*この記事は「韓国越境EC完全ガイド」の一部です。全体像を知りたい方は、こちらをご覧ください。

韓国向け越境ECで利用できる配送方法
韓国は日本から近距離に位置するため、他国に比べて物流面で有利です。しかし、配送スピードやコストはユーザー体験に直結するため、どの配送方法を採用するかは韓国向け越境EC成功のカギとなります。ここでは代表的な配送手段と、そのメリット・注意点を解説します。
EMS(国際スピード郵便)の特徴とメリット
EMS(国際スピード郵便)は、日本から韓国への配送で最も一般的に利用される方法です。最大30kgまで対応可能で、書類から小〜中規模の荷物まで幅広くカバーできます。配送日数は通常 2〜5日程度 とスピーディで、日本郵便が提供するため信頼性が高く、追跡機能も充実しています。
韓国ユーザーは「注文から到着までの速さ」に敏感であるため、EMSを採用することは顧客満足度の向上に直結します。
配送スピード
- 配送日数:2〜5日程度
→ 韓国は地理的に近いため、実際には平均2〜3日で届くケースが多い - 越境ECにおける「速さ」は顧客満足度に直結し、特にコスメ・健康食品などリピート性の高い商品ジャンルではリピート率向上に効果的
料金体系の特徴
- 重量課金制で、100g単位(0.5-1.0kg)、250g単位(1.0kg-2.0kg)、500g単位(2.0kg-6.0kg)、1kg単位(6.0kg-30kg)で料金が変動
- そのため、梱包を最適化して重量を抑えることが利益率改善につながる
参考:日本郵便公式EMS料金表(韓国宛)
日本郵便 EMS料金一覧(韓国)
信頼性と利便性
- 日本郵便が提供する公式サービスのため信頼性が高い
- 追跡システムが充実しており、発送から到着までのステータスを顧客と共有可能
- 韓国の顧客にとっても馴染みがあり、「EMS=安心して受け取れる配送方法」という認識が強い
まとめると、EMSは 「スピード × 安心感 × コスト効率」 のバランスが取れたサービスであり、韓国向け越境ECの標準的な配送手段といえます。特に重量課金の仕組みを理解し、梱包工夫でコストを抑えることが競争力のカギになります。
国際宅配便(DHL / FedEx / UPS)の活用
- 高額商品や大量配送に適している
- 通関スピードが速いため、遅延リスクを抑えやすい
- 追跡制度が正確で、顧客に安心感を与えられる
国際宅配便は送料が高めになるものの、B2B取引や高単価商品を扱う越境ECでは有効な選択肢です。また、韓国の法人顧客向けに大量注文を受ける場合にも向いています。信頼性とスピードを両立できるため、ブランド価値を高めたい日本企業にとっては検討すべき手段といえるでしょう。
船便の利用と注意点
- コストが安いため、大量・低単価商品の配送に適している
- ただし、配送に2〜3週間以上かかるケースが多い
- 越境ECの即時性を求める消費者ニーズには合わない場合が多い
韓国向け越境ECにおいて、船便は一般的に利用されません。理由は「スピード感」に欠けるためです。ただし、在庫を前もって韓国に供給しておき、現地倉庫やフルフィルメントと組み合わせる戦略をとる場合には、コスト削減手段として有効に機能します。
まとめると、韓国越境ECでは EMSが基本、国際宅配便が補完、船便は特殊ケース という位置づけです。
PCCC(個人通関コード)の対応方法
韓国向け越境ECでは、物流と並んで必ず押さえるべき重要ポイントが PCCC(Personal Customs Clearance Code/個人通関コード)対応 です。PCCCを適切に処理できないと、配送が止まり、最悪の場合は返送やキャンセルにつながります。ここでは、PCCCの基礎知識から、Shopifyでの実装方法まで解説します。
PCCCとは?
- 韓国税関が発行する「個人通関コード」で、韓国在住の個人が海外から商品を輸入する際に必須となる番号
- 韓国国民は韓国税関(Korea Customs Service)のオンラインシステムで発行可能
- 日本から韓国に商品を発送する際、顧客が購入手続き時に自分のPCCCを入力し、それを通関書類に反映する必要がある
日本でいうマイナンバーに近い役割を持つのがPCCCです。 韓国の越境EC運営においては、本人確認と税関処理を円滑に進めるための必須コードと考えるとわかりやすいでしょう。
PCCC未入力が引き起こす韓国越境ECの配送トラブル
PCCCが未入力のまま商品を発送すると、以下のような問題が発生します。
- 通関で止まる → 税関が顧客を特定できず、商品が保留状態になる
- 配送遅延や返送リスク → 保留期間を過ぎると商品が返送され、送料や関税が無駄になる
- 顧客体験を大きく損なう → 商品が届かない、返金や再発送でトラブルに発展
特にコスメや健康食品などリピート購入の多いジャンルでは、1回のトラブルが顧客の信頼を失い、リピーター獲得の大きな障害になります。
ShopifyでのPCCC入力対応
韓国向け越境ECをShopifyで運営する場合、チェックアウト画面に「PCCC入力欄」を追加する仕組みが不可欠です。
- 実装方法
- Shopifyアプリを利用してカスタムフィールドを追加
- Liquidコードを編集し、チェックアウト画面に「PCCC入力必須欄」を設置
- 入力フローの工夫
- 「PCCCを入力しないと配送できません」という注意書きを明示
- 入力例(例:P123456789012)を提示して入力ミスを減らす
- メール確認や購入後案内で再確認する仕組みを用意
これにより、購入時点で必ずPCCCを取得 → 通関でスムーズに処理 → 配送トラブル回避 という流れを作ることができます。
PCCC対応は一見細かい作業に見えますが、韓国越境ECでの顧客満足度とリピート率を守るために 最重要のカスタマイズポイント です。
参考:
韓国税関公式システム「UNI-PASS」のPCCC発行ページ
PCCCに関する公式FAQ
韓国輸入にかかる関税・VATの基礎知識
韓国向け越境ECを展開するうえで、関税と付加価値税(VAT) の仕組みを理解しておくことは必須です。誤った対応をすると、配送遅延や返送、顧客クレームにつながるだけでなく、ブランドの信頼性を大きく損なうリスクがあります。ここでは韓国輸入時の課税ルールと、越境EC運営者が注意すべきポイントを整理します。
課税ルール(150USDが境界線)
韓国では輸入品に対して、以下の課税ルールが適用されます。
- 150USD以下:個人輸入の場合は関税免除(ただし健康食品や医薬品など一部品目は例外)
- 150USD超:関税+付加価値税(VAT 10%)が課税対象
- 課税対象額:「商品代金+国際送料」が基準となり、送料を含めた合計金額で判断される
そのため、送料が高額な場合、課税対象額が150USDを超えてしまうケースも多く、注意が必要です。
品目別関税率の目安
韓国では品目によって関税率が異なり、日本企業が越境ECで取り扱う主要カテゴリには以下のような傾向があります。
- 化粧品・健康食品:5〜20%程度
- 日用品・生活雑貨:8〜13%程度
- アパレル・ファッション小物:8〜13%程度
特に化粧品や健康食品は日本製品の人気が高い一方で、課税対象になりやすいため、価格戦略や顧客への案内を慎重に設計することが重要です。
越境EC運営者が注意すべきポイント
関税・VATに関しては、購入前に顧客へ明確に伝えることでトラブルを防げます。
- 商品ページに明記:「関税・VATは購入者負担となります」と表示し、購入時の誤解を避ける
- 高額商品の場合は事前案内:「150USD超の商品は関税・VATが発生する可能性があります」と事前に説明しておく
- DHLやFedExなど国際宅配便の活用:関税計算や事前精算に対応できるため、配送トラブルを減らせる
- 関税込み価格の表示:リピーターや高単価商品を狙う場合、あらかじめ関税込みで販売することで、顧客の不安を解消し購入率を高められる
韓国ユーザーは購入時に「総額がいくらになるか」を非常に気にします。そのため、関税・VATを考慮した価格設計と透明な説明が、信頼性とリピート購入のカギになります。
送料設計と顧客満足度の両立
韓国向け越境ECを運営するうえで、送料の設定は購入率に直結する重要な要素です。韓国ユーザーは価格に敏感であり、「送料の高さ」に不満を感じやすいため、いかに心理的ハードルを下げるかが成功の分かれ目になります。ここでは、韓国市場特有の送料感覚と、それに対応する実務的な工夫を解説します。
韓国越境ECでの送料に敏感なユーザー心理
韓国では、「送料が高い」と感じると購入をためらうユーザーが多い傾向があります。特に越境ECの場合、国際送料が商品代金と同額かそれ以上になるケースも珍しくなく、これがカート離脱の原因となります。
そのため、効果的な戦略としては:
- 一定額以上購入で送料無料にする(例:80USD以上で送料無料)
- 「送料無料まであと〇〇USD」と表示してカゴ落ちを防止
- 送料を含めた「総額表示」を行い、ユーザーに不安を抱かせない
韓国消費者は「送料が無料になるライン」でまとめ買いする習慣があるため、送料無料閾値をうまく設定することで客単価を引き上げる効果も期待できます。
倉庫や転送サービスの活用
送料を下げるもう一つの有効な手段が、倉庫や転送サービスの活用です。
- 日本国内の倉庫業者や転送会社を経由することで、複数商品のまとめ発送や送料の最適化が可能
- 韓国現地倉庫(フルフィルメント型)を活用すれば、配送スピードの改善や送料削減に直結
- 例:ソウルや釜山に在庫を事前配置 → 注文後1〜2日で配送可能
- 韓国の大手ECモールでも採用される方法で、ユーザー体験が国内EC並みに向上
フルフィルメントは初期コストがかかりますが、販売規模が一定以上に拡大した段階で検討すると、リピート率や顧客満足度に大きな効果を発揮します。
まとめると、韓国越境ECにおける送料設計は、
- 心理的な送料ハードルを下げる工夫(送料無料ライン設定)
- 物流インフラの最適化(倉庫・フルフィルメント活用)
この2つを組み合わせることで、購入率と利益率の両立を実現できます。
まとめ|韓国越境EC物流の成功ポイント
韓国向け越境ECを成功させるためには、物流・通関対応をいかに整えるかが重要です。単なる「配送」ではなく、顧客体験そのものを支える基盤と考える必要があります。ここで紹介したポイントを整理すると、次のようになります。
- 配送はスピード重視:EMSやDHLを基本に据え、韓国ユーザーが求める「早く届く安心感」を提供する
- PCCC入力対応は必須:チェックアウト画面に入力欄を用意し、購入時点で確実に顧客情報を取得してトラブルを防止する
- 150USD超の課税に注意:関税+VATが発生する仕組みを事前に案内し、購入後のクレームや返送リスクを避ける
- 送料設計の工夫:一定額以上で送料無料を設定したり、倉庫・フルフィルメントを活用して心理的ハードルを下げる
これらを早い段階で整備しておくことで、配送遅延や通関トラブルを未然に防ぎ、リピーターを獲得しやすい体制を築くことができます。特に韓国市場は「配送の速さ」や「安心感」が購買決定に大きな影響を与えるため、物流戦略を軽視すると競合に後れを取るリスクが高まります。
韓国越境ECに取り組む企業は、単なるコスト削減の視点ではなく、顧客満足度とリピート率を高める投資として物流を最適化することが成功の近道といえるでしょう。
